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新設企業のための就業規則作成ガイド ― 最新版モデル規則付き

企業を運営するうえで、明確で有効な就業規則を整備することは、
組織の秩序を維持し、業務効率を高め、法的リスクを最小限に抑えるための
重要な要素です。就業規則は単なる人事管理の文書ではなく、懲戒処分や社内トラブル解決のための
重要な法的根拠でもあります。特に新設企業にとっては、創業初期の段階から
体系的な就業規則を構築することで、持続的な企業文化の基盤を築くことができます。本記事では、新設企業が就業規則を作成・適用するための手順を詳しく解説し、
最新の労働法規に沿った会社規則サンプルを紹介します。

会社の就業規則とは?

法的にみた就業規則の定義

2019年労働法第118条によると、就業規則とは、使用者(会社側)が労働者の義務や懲戒に関する行為を規律するために定めた規定の集合体を指します。従業員が10人未満の企業については、就業規則の届出義務はありませんが、労務管理を円滑に行うために就業規則を策定することが推奨されています

就業規則は文書として作成し、全従業員に周知しなければなりません。これにより透明性と法令遵守が確保され、労働紛争が発生した際の重要な法的根拠となります。

就業規則は義務なのか?

法律上、すべての企業に就業規則の作成が義務付けられているわけではありません。
しかし、従業員が10人以上の企業では、就業規則の作成と届出が義務とされています。就業規則の有無は、会社が従業員に対して懲戒処分や違反対応を行う能力に直接影響します。
小規模企業であっても、新設会社向けの就業規則モデルを作成しておくことで、社内の行動原則・マナー・勤務基準を明確化でき、リスクを軽減し、経営効率を向上させることができます。

就業規則と労働契約の違い

よくある誤解のひとつに、「就業規則=労働契約」というものがあります。
しかし、実際にはこれはまったく異なる法的文書です。

  • 労働契約:使用者と労働者の間で交わされる双務的な合意文書であり、双方の権利と義務を具体的に定めます。
  • 就業規則:会社が一方的に制定する文書であり、全従業員に適用される一般的な規範です。

就業規則は、労働契約を補完しながら、職場の秩序維持や懲戒処分を行うための基本的枠組みとして機能します。

従業員の就業規則に対する責任

労働契約を締結した従業員は、会社の就業規則を遵守する義務があります。
これに違反した場合、就業規則に定められた懲戒措置(例:注意、昇給延期、解雇など)が適用されることがあります。同時に、就業規則は従業員が自らの権利・義務を理解し、企業文化に沿った行動をとるための指針でもあります。そのため、企業は就業規則を作成する際に、従業員や労働者代表の意見を取り入れることが重要です。これにより、規則が現実的で実行可能となり、従業員の理解と遵守を得やすくなります。

会社の就業規則はどのように作成するのか?

就業規則の作成とは、従業員の行動・義務・権利を規律するための社内ルールを体系的に定めるプロセスです。十分に整備された就業規則は、単に職場の秩序を維持するだけでなく、持続的な人事管理の基盤にもなります。特に新設企業においては、標準的な就業規則モデルをあらかじめ用意しておくことで、作成時間を大幅に短縮でき、労働法に準拠した運用を確保することができます。

標準的な会社就業規則の構成

標準的な就業規則は、通常以下の7つの基本項目で構成されています。

  1. 目的および適用範囲
  2. 勤務時間および休憩・休日
  3. 服装規定および労働安全衛生
  4. 会社資産の使用に関する規定
  5. 禁止される行為
  6. 労働上の責任および懲戒処分
  7. 規則の効力および改定手続き

それぞれの項目は、明確で理解しやすい表現で記載し、従業員が容易に把握し遵守できるようにする必要があります。
業種や事業形態に応じて内容や構成を調整しても構いませんが、労働法で定められた法的要件を満たすことが重要です。

就業規則作成の基本原則

効果的な就業規則を構築するためには、企業は次の3つの原則を守る必要があります。

  1. 合法性(Legality) – 内容が現行法令に反してはならない。
  2. 透明性(Transparency) – 従業員が理解しやすく、実行しやすい内容であること。
  3. 実現可能性(Feasibility) – 会社の実際の運営状況に適していること。

さらに、就業規則を作成する際には、従業員または労働者代表組織(労働組合等)の意見を聞くことが望まれます。これにより、規則が現場に即したものとなり、苦情や不適用といった問題を防ぐことができます。

就業規則作成時によくあるミス

特に新設企業においては、就業規則作成時に以下のような一般的な誤りが見られます。

  • 不適切な他社のサンプルをそのままコピーして使用する。
  • 難解な法律用語や専門用語を使いすぎ、従業員が理解できない。
  • 法令に反する条項を盛り込む(例:従業員への金銭罰 – 労働法で禁止されている行為)。
  • 構成や懲戒手続きの明確な流れが欠けている
  • 就業規則を作成しても従業員に周知徹底していない

これらのミスを防ぐためには、労務・法務の専門家に相談するか、専門の就業規則作成サービスを利用して、法的に有効で実務に即した規則を整備することをお勧めします。

新設企業の就業規則モデルには何が含まれるか?

新しく設立された企業にとって、明確で理解しやすく、法的に適正な就業規則を持つことは非常に重要です。
就業規則は、従業員が自らの権利と義務を正しく理解する助けとなるだけでなく、企業が違反行為への対応・規律の維持・業務効率の向上を図るための基礎にもなります。
労働規則のモデルは、企業の業種や規模に適した形で、体系的かつ実践的に構築される必要があります。

基本的な就業規則モデル

一般的な就業規則モデルは、ほとんどの企業に共通して適用できる基礎的な内容で構成されています。主な項目は以下の通りです。

  • 勤務時間および休憩・休日
  • 服装および身だしなみの規定
  • 職場での行動規範(マナー・礼儀)
  • 会社資産・設備の使用ルール
  • 労働安全衛生・防火防災の規定
  • 表彰および懲戒制度
  • 違反行為への処理手続き

このモデルは、従業員10名未満の企業や、就業規則の行政届出が不要な企業に適しています。
企業はこのモデルを基本的な枠組みとしてカスタマイズし、自社の実情に合わせて修正することができます。

製造業・建設業向け就業規則モデル

製造業や建設業のように、危険性やリスクの高い業種では、特に安全衛生管理に関する規定を強化する必要があります。

一般的な内容に加えて、以下のような項目を詳細に定めることが望ましいです。

  • シフト勤務や交代制勤務の詳細
  • 休憩時間・中間休憩の管理
  • 定期的な安全点検および安全教育
  • チーム作業時の連携ルール

また、禁止行為として次のような事項を明記することが重要です。

  • 可燃物のある場所での喫煙
  • ヘルメットなどの保護具を着用しない行為
  • 許可なく機械や設備を操作する行為

これらを明確に定めることで、労働災害の防止と安全意識の向上を図ることができます。

商業・サービス業向け就業規則モデル

商業・サービス業(例:スーパーマーケット、流通業、旅行会社、スパ、レストランなど)の場合、
就業規則では特に以下の項目を重視する必要があります。

  • 勤務時間・出退勤管理
  • 顧客対応のマナー・行動規範
  • 情報の機密保持
  • 職場での言動・接客態度

具体的な内容例:

  • 顧客に対する丁寧で誠実な応対態度
  • 勤務中の私用電話の使用禁止
  • 上司の許可なく外部客との面会をしない
  • 顧客からの苦情対応手順

このような規定は、サービスの特性や顧客の声に応じて柔軟に改定し、常に現場に即した運用を行うことが望まれます。

既存の就業規則サンプルを使用する際の注意点

既に公開されている就業規則サンプルを利用するのは便利ですが、そのまま流用するとリスクを伴う場合があります。

主な注意点は以下の通りです。

  • 非公式または古いテンプレートを使用すると、最新の法令に合致しない可能性がある。
  • 法律に反する条項(例:金銭罰など、労働法で禁止されている内容)が含まれている場合がある。
  • 会社の規模・文化・事業形態に合わないケースがある。

したがって、テンプレートは参考資料として活用し、自社の実情に合わせて修正することが重要です。最も確実な方法は、労務法務の専門家や就業規則作成サービスに相談し、
法令遵守かつ実際に運用可能な規則を整備することです。

会社の就業規則は届出が必要か?

どの企業が就業規則を届出しなければならないのか

2019年労働法第119条によると、従業員が10名以上の企業は、書面による就業規則を作成し、労働行政機関へ届出を行う義務があります。
届出先は企業の所在地により異なり、

  • 区・郡レベルの場合:労働・傷病兵・社会問題局(Phòng Lao động – Thương binh và Xã hội)
  • 省・市レベルの場合:労働・傷病兵・社会問題局(Sở Lao động – Thương binh và Xã hội)
    となります。

従業員が10名未満の企業は届出の義務はありませんが、就業規則を作成した場合には全従業員に周知徹底することが推奨されます。
届出が必要な企業がこれを怠ると、就業規則が法的効力を失い、労働紛争時の処理が困難になる可能性があります。

就業規則届出のための必要書類

就業規則を登録・届出するためには、企業は以下の書類を準備する必要があります。

  1. 就業規則届出申請書(労働・傷病兵・社会問題省発行の通達第10/2020/TT-BLĐTBXHに定められた様式)
  2. 発行済みの就業規則(法定代表者の署名と社印があるもの)
  3. 労働者代表組織の意見書または会議議事録(労働組合や従業員代表が存在する場合)

これらの書類を1部にまとめ、企業の所在地に応じて窓口で直接提出するか、各省市の電子行政ポータルサイトを通じてオンライン提出することができます。

届出の受付機関

企業の規模や所在地によって、受付機関は以下のように分かれます。

  • 区・郡レベルの労働・傷病兵・社会問題局(Phòng LĐTBXH)
     → 中小企業向け
  • 省・市レベルの労働・傷病兵・社会問題局(Sở LĐTBXH)
     → 大企業または外資系企業向け

正しい機関に届け出ないと、書類が差し戻される、または処理が遅延するおそれがあります。現在、多くの地方自治体ではオンライン申請に対応しており、時間とコストを大幅に削減できます。

審査期間および処理手続き

すべての書類が適法に提出された場合、受理機関は7営業日以内に審査・結果通知を行う義務があります。
書類に不備がある場合は、企業に補正の指示が出されます。もし7営業日を過ぎても返答がない場合は、就業規則は自動的に有効とみなされ、企業は通常通り適用可能です。企業は、提出受領書や証拠資料を厳重に保管しておくことが重要です。承認後、就業規則は以下の方法で全従業員に広く周知する必要があります。

  • 事務所や作業場への掲示
  • 社内メールでの配信
  • 社内システムまたはイントラネットへの掲載

不承認となった場合とその対応方法

行政機関が就業規則の届出を不承認とする場合、その理由として以下のような点が挙げられます。

  • 規定内容が法律に抵触している
  • 条項が不明確または不透明である
  • 必要な法的書類が不足している

例として、

  • 従業員に対する金銭罰の規定
  • 懲戒処分における差別的取り扱い
    などは労働法で禁止されているため、承認されません。

不承認となった場合、企業は当局の指摘内容に基づいて修正し、再提出する必要があります。この際、労務法務の専門家または就業規則作成サービスの支援を受けることで、法的に有効かつ実務で運用可能な就業規則を整備することができます。

会社就業規則を制定することのメリットとは?

就業規則の制定は、単に一部の企業に対して法的に求められる義務であるだけでなく、
企業運営や人事管理において実践的かつ多面的なメリットをもたらします。明確で一貫性のある労働規則を整備することは、企業文化の形成、職場の専門性の向上、法的リスクの回避に大きく貢献します。以下では、就業規則を整備することで得られる5つの主要な利点について説明します。

1. 規律ある職場環境の構築

就業規則を制定する最大のメリットの一つは、組織的で規律ある職場環境を作ることです。規則を通じて、勤務時間、職場でのマナー、社内コミュニケーション、部門間の関係などに関する明確な基準を設定することで、従業員は会社からの期待と自身の行動範囲を理解できます。特に新設企業にとっては、標準的な就業規則モデルを早期に導入することで、
創業初期から職場の基準を明確化し、混乱や一貫性の欠如を防ぐことができます。

2. 労働紛争の防止と解決

明確な就業規則は、労働者と使用者の間で発生するトラブルを公平に解決するための法的根拠となります。権利・義務・違反に対する処分などを明文化することで、
双方が共通の基準に基づいて紛争を解決でき、無用な対立や訴訟リスクを防ぐことができます。また、ルールが明確であることで、従業員は安心して業務に集中でき、
企業に対する信頼感が高まります。

3. 法的に有効な懲戒処分の根拠となる

従業員が職務義務に違反した場合、就業規則は適法な懲戒処分を行うための根拠となります。労働法上、懲戒処分は就業規則に明記された行為に基づかなければならず、
記載がない場合、その処分は法的効力を持ちません。したがって、就業規則を持たない、あるいは登録していない企業(10名以上の企業)は、違反処理において大きな制約を受ける可能性があります。このように、適法で完全な就業規則の整備は、従業員と企業の双方を保護することにつながります。

4. 業務効率の向上

全従業員が自らの役割・責任・行動基準を理解することで、チームワークが円滑になり、無駄な衝突や混乱を防ぎ、生産性が向上します。また、就業規則は新入社員が会社文化に迅速に適応するためのガイドとしても機能し、
再教育にかかる時間を削減します。ルールが明確であることで、社員間の「やり方の違い」を防ぎ、
業務プロセスの一貫性と全社的な効率性を高めることができます。

5. 企業文化の醸成と組織の一体化

就業規則は、単なる管理ツールではなく、企業文化を形成する重要な要素です。企業の価値観やビジョンに基づいて策定された規則は、従業員に対し、会社が求める「姿勢・方向性・働き方の精神」を伝えます。透明で公平な規則運用は、管理層と従業員の信頼関係を築き、組織の結束を強化します。また、外部から見ても、こうした取り組みは企業の専門性と誠実さを示す象徴となります。

就業規則の制定は、従業員10名以上の企業に対する法的義務であるだけでなく、
長期的な人事管理における戦略的ステップでもあります。体系的に構築された就業規則は、企業が職場の規律を維持し、法的に正当な形で紛争を解決し、
社内の結束を強化するための重要な基盤となります。本記事で紹介した新設企業向けの就業規則モデルを活用すれば、
自社の事業特性に合わせて容易にカスタマイズすることが可能です。もし、作成手順に不安がある場合や、専門的なサポートが必要な場合は、
法務コンサルタントや専門会計サービスに相談することで、
すべての手続きが法令に基づいて正確かつ適切に行われるよう確保できます。

ご不明点がございましたら、すぐにWacontre会計サービスにご連絡ください。ホットライン: (028) 3820 1213 またはメール: info@wacontre.com にて、迅速かつ丁寧にサポートいたします。経験豊富なスタッフが、お客様に対し、熱意をもって最適なサービスを提供いたします。(日本のお客様はホットライン (050) 5534 5505 にお問い合わせください。)